金融商品についてのまとめ
いままで、このブログに書いてきた金融商品の知識(トラブルについて)を、事務所のHPにまとめました。興味がある方は見てください。
金融取引被害相談
オプション取引とは 3-具体例 プット・オプション
プット・オプションを具体例で説明しましょう。
A(買い主)がB(売り主)と、オプション取引を行い、「X社の株式を1年後に、1株1000円で1000株売ることができる権利(プット・オプション)」を、対価10万円を支払って、購入したとします。
【A(買い主)から見た場合】
(1) 1年後、X社の株価が800円になったとします。この場合、Aは、X社の株式を800円×1000株=80万円で、株式市場から購入し、さらに、Aは、Bに対し、上記の権利を行使することにより、X社の株式1000株を、1000円×1000株、つまり、100万円で売却することができます。
この取引によりAは
(1000円×1000株)-(800円×1000株)-10万円(オプションの単価)
=10万円
の利益が上げられることになります。
(2) 1年後、X社の株価が1200円となった場合は、オプションを行使して1株1000円で1000株をBに売っても意味がありません。この場合は、Aはオプションを放棄することになります。この場合は、対価10万円が損失となります。
【B(売り主)から見た場合】
(1)’ 上記(1)の場合、Aの利益10万円がBの損失となります。
(2)’ 上記(2)の場合、オプション代価である10万円がBの利益となります。
結局、1年後、株価が1株1000円以下の場合は、Aはオプションを行使し、利益を得ることになりますが、そのAの利益-10万円(オプションの代価)がBの利益(前記の計算でAに結局損失がある場合)あるいは損失(前記の計算でAに利益がある場合)となります。逆に、株価が1000円を越える場合は、Aはオプションを行使しないため、オプションの代価10万円がAの損失、逆にBにとっては利益となります。
オプション取引とは 2-具体例 コール・オプション
コール・オプションを具体例で説明しましょう。
A(買い主)がB(売り主)と、オプション取引を行い、「X社の株式を1年後に、1株1000円で1000株買うことができる権利(コール・オプション)」を、対価10万円を支払って、購入したとします。
【A(買い主)から見た場合】
(1) 1年後、X社の株価が1200円になったとします。Aは、Bに対し、上記の権利を行使することにより、X社の株式1000株を、1000円×1000株、つまり、100万円で購入することができます。そして、これを市場で、1株1200円で売却することができます。この取引によりAは
(1200円×1000株-10万円(オプションの対価))-1000円×1000株
=10万円
の利益が上げられることになります。
(2) 1年後、X社の株価が800円となった場合は、オプションを行使して1株1000円で1000株を買っても意味がありません。この場合は、Aはオプションを放棄することになります。この場合は、対価10万円が損失となります。
【B(売り主)から見た場合】
(1)’ 上記(1)の場合、Aの利益10万円がBの損失となります。
(2)’ 上記(2)の場合、オプション代価である10万円がBの利益となります。
結局、1年後、株価が1株1000円を越える場合は、Aはオプションを行使し、利益を得ることになりますが、そのAの利益-10万円(オプションの代価)がBの利益(前記の計算でAに結局損失がある場合)あるい損失(前記の計算でAに利益がある場合)となります。逆に、株価が1000円以下の場合は、Aはオプションを行使しないため、オプションの代価10万円がAの損失、逆にBにとっては利益となります。
オプション取引とは 1-オプション取引の概要
オプションとは選択権のことですが、オプション取引とは、ある商品(原資産-通貨・債権・株式・株式指数などの金融商品、原油などの商品等)の一定数量を将来の特定の日(まで)に、予め取引時に約束した価格(行使価格)で買うことのできる権利(コール・オプション)または売ることのできる権利(プット・オプション)を売買する取引のことです。将来のある時点においてのみ権利を行使することが可能であるオプションを「ユーロピアン・オプション」と呼び、契約締結後の将来の一定時点までの任意の時点で権利が行使可能なものを、「アメリカン・オプション」と言います(上記のオプション取引の定義の「特定の日(まで)」の(まで)はこのためです)。
コール・オプション(買うことのできる権利)の保有者は、相手方に対し、原資産を特定の期日(まで)に、行使価格で、一定数量を購入する権利が与えられます。プット・オプション(売ることのできる権利)の保有者は、相手方に対し、原資産を特定の期日までの任意の時点に、行使価格で、一定数量を売却する権利が与えられます。
オプションの保有者は、相手方に対し、対象商品の売買の履行を請求する「権利」を保有していますが、売買の履行を請求する「義務」はないので、自己に不利な場合にはオプションを放棄して権利行使を行わないこともできます。他方、相手方は、オプションの保有者が権利を行使した応じなければならない「義務」があります。
結局、オプション取引には、コール・オプションの購入及び売却、プット・オプションの購入及び売却の4種類が存在することになります。オプションを購入するためには、その対価(プレミアム)を支払わなくてはなりません。
スワップ取引とは 4-スワップ取引の危険性
この項まで、スワップ取引の主にリスクヘッジの機能の観点から、スワップ取引について、説明してきました。
スワップ取引のリスクヘッジの機能が有益であることは否定できません。
しかし、このようなリスクヘッジの機能にしても、使い方を誤れば、その機能が果たされません。
前記の公正取引委員会の同意審決において、公正取引委員会は、
「金融機関から変動金利による借入を受けている事業者は」「変動金利を受け取り、固定金利を支払うことを内容とする金利スワップを購入することによって、金融機関からの借入に係わる変動金利を固定化することが可能となり、金利上昇リスクのヘッジをすることができる。」
としつつ、
金融機関(銀行)が「事業者における金融機関からの借入(特に、他の金融機関からの借入)に係わる支払金利の種類、弁済条件等の個別の借入の内容及び事業者における将来の金融機関からの借入の予定について十分に検討することなく、また、金利スワップの想定元本又は契約期間が、金利上昇リスクのヘッジ対象となる借入の元本又は契約期間を上回る設定(金利スワップの想定元本が契約期間中に金利上昇リスクのヘッジの対象としたた借入れの元本を上回ることになる設定も含む。「)となる金利スワップの購入を提案し、販売している場合がある。」
ことを、優越的地位の濫用の判断の前提となる事実として認定しています。
たとえ、リスクヘッジのためであっても、上記のように、金融機関からの借入の予定について十分に検討することなく、また、金利スワップの想定元本又は契約期間が、金利上昇リスクのヘッジ対象となる借入の元本又は契約期間を上回る設定であれば、企業等に損害を与えることになります。
さらに、現在問題となっているスワップ取引は、そのほとんどすべてが、投資・投機のためであり、リスクヘッジのためではありません。そのため、先物取引と同様の危険を生じうることになります。
下記の2つの著書は、サブプライム問題の経過についての簡潔な確認として、手頃だと思います。
1 サブプライム問題とは何か アメリカ帝国の終焉 (宝島社新書 254) (新書)
春山 昇華 (著)
2 サブプライム後に何が起きているのか (宝島社新書 270) (新書)
春山 昇華 (著)
スワップ取引 3-ノックアウト・オプション、ノックイン・オプション
このようにスワップ取引は、リスクヘッジの機能を持つものですが、リスクをヘッジする当事者の相手方の当事者は、リスクヘッジではなく、投資として、契約を締結させることになります。
スワップ取引 1において、定義づけたように、「スワップ取引とは、キャッシュフローを交換(SWAP)する取引のことです。ここにおけるキャッシュフローは、取引時点において価値が等しく、将来受け取ったり支払ったりするものです。」というように、理論的には価値が等しい、直截的には、Bは自分自身に有利な取引と認識しなくては、契約を締結しません。
このようにAB双方の利益のバランスをとるため、スワップ契約だけではなく、デリバティブ契約では、特殊な条項が入れられることがありますが、そのなかに、ノックアウト・オプション、ノックイン・オプションがあります。
ノックアウト・オプションというのは、「対象となる原資産が一定の価格水準に達すると(※当該契約等)が消滅する」ことを定めた条項のことであり、ノックイン・オプションとは、「あらかじめ決められた期間(モニタリング期間または観察期間という)中に、対象となる原資産が一定の価格水準に達すると発生する」条項です(引用は、日本弁護士連合会消費者問題対策委員会編「金融商品取引被害救済の手引(五訂販)409頁から、※は私)。
これだけでは、抽象的ですので、 AとBの間で5年間、毎月、AがBに100万円を支払い、Bが1万ドル支払う通貨スワップ契約の例で、説明します。
契約締結時の今が、1ドル=100円の為替レートだとします。ノックアウト・オプションの例としては、例えば、為替レートが120円以上の円安になるとこの契約自体が消滅するというような条項が挙げられます。また、ノックイン・オプションの例としては、為替レートが90円を越える円高になった場合、その為替レートが維持されている期間、契約の内容が、毎月、AがBに200万円を支払い、Bが2万ドル支払うとの内容に変更するとの条項が挙げられます(それぞれ、例であり、内容的には、さまざまなものがあります)。
為替レートが、120円と言うことは、1万ドル=120万円ということになります。しかし、本来のスワップ契約では、Bは100万円と引き換えに、Aに1万ドルを支払わなくてはならず、差額200万円は、Bの負担となります。為替が円安になればなるほど、Bの負担部分は大きくなります。しかし、上記のようなノックアウト・オプションがあれば、契約が消滅することになりますので、120円以上の円安になれば、Bは負担を免れることになります。
他方、為替レートが90円と言うことは、1万ドル=90万円ということになります。為替レートでは、Bは1万ドルで90万円にしか替えられないのに、この契約により、100万円を取得できることになります。100-90=10万円はBの利益となります。そして、上記のようなノックイン・オプションがあり、さらに、90円を超えるような円高になった場合、倍の200万円=2万ドルの取引を行うことになりますので、Bの利益が倍になるとともに、Aの損失も倍になります。
リーマンショック以降の円高により、このようなデリバティブ取引により会社等の損失が発生、増大した理由には、上記のようなノックイン条項の存在もあります。
スワップ取引 4に続く
スワップ取引とは 2-通貨スワップ
通貨スワップとは、異種の通貨の元利金を交換する取引です。
これも例を挙げて説明しましょう。同じく取引の当事者は、AとBにします。
現時点で、1ドル=100円の為替相場だとします。Aは、これから5年間、毎年10万ドルの原材料を米国業者から仕入れるとします。現時点では、1ドル=100円ですので、10万ドルを支払うためには、1000万円を用意しなければなりません。しかし、将来円安となり、1ドル=120円になると、1200万円を用意しなければならなくなります。Aとしてはこのような為替変動のリスクを取りたくありません。
そこで、Bとの間で、5年間、毎年、AがBに1000万円を支払い、Bが10万ドル支払う通貨スワップ契約を締結することが考えられます。
こうすれば、Aは、為替変動のリスクをヘッジする(防ぐ)ことができ、結果的に毎年1000万円の負担で、原材料を購入することができます。
米国業者 ← A → B
→ ←
なお、通貨スワップのうちで、上記契約と異なり、元本交換をせず金利部分の交換のみを行う契約は、クーポンスワップと呼ばれています。
(スワップ取引3へ)
スワップ取引とは、キャッシュフローを交換(SWAP)する取引のことです。ここにおけるキャッシュフローは、取引時点において価値が等しく、将来受け取ったり支払ったりするものです。スワップ取引には、金利スワップ、通貨スワップなどがあります。
金利スワップとは、同じ通貨で種類の異なる金利同士を交換する取引です。
例を挙げて説明しましょう。取引の当事者をAとBとします。Aが銀行から1億円を期間3年間でLIBOR(ロンドン銀行間取引金利)に基づく変動金利で借りているとします。 しかし、Aとしては、金利変動のリスク、すなわち、将来金利が高くなるリスクをとりたくありません。
そこで、Bとの間で、(1)AがBに対し1億円についての固定金利2%の利息を銀行からの返済期間である3年間払うとともに、(2)BがAに対し1億 円についてのLIBORに基づく変動金利を同じく3年間支払うことを内容とする金利スワップの契約を締結します。
金利の支払いの流れ
①元本1億円についての ②元本1億円についての
変動金利の支払い 固定金利2%の支払い
銀行 ← A → B
←
③元本1億円についての
変動金利の支払い
Aが銀行に支払う金利(①)及びBがAに支払う金利(③)は、変動金利で同額です。そこで、AはBから支払ってもらったお金(③)を銀行にそのまま支払えばよいことになります。将来、①の支払いについての変動金利の金利が上昇し支払う金額が増えても、③の支払いの金額も増えますので、結局、AはBに対する固定金利2%を支払い続ければいいことになります。
他方、Bは、上記変動金利が固定金利2%を下回っている限り、利ざやを稼ぐことができることになります(反面、変動金利が固定金利2%を上回った場合は、余分に支払わねばならないことになります)。
(スワップ取引2に続く)
最近のコメント